糖尿病、生活習慣病の専門医院 松本市・多田内科医院

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真珠の耳飾の少女に会いたい

4月30日(女王誕生日)
狂乱の女王誕生日である。女王カラーであるオレンジ色のものを身につけた群衆が街の中に繰り出し、大騒ぎをするという。そういえばすでに昨日の夜から街は大変なことになっていた。中央駅の近くにあるホテルなので、夜中じゅう男どもの笑い声や女どもの嬌声、デイスコの音楽が部屋の中に響いてきて、耳栓がなければ眠れない状態だった。今朝も、先天性伝染性爽快感発散症を患っているまこと君、「さあ、元気を出していきましょう」と笑顔で迫ってくるので、亜急性反復性不眠的陰鬱疲労症候群に陥ったわたしの症状もやや改善傾向が認められた(表現がしつこくなったのも症状のうち)。トラムも車も走っていない大通りをオレンジ色の人々と一緒になって闊歩する。まこと君までオレンジ色のジャンパーを着込んでいる。道の真ん中で屈強のジジイ愚連隊が肩を組んで獣のような声で歌っている。郎党を組んだ10代の娘どもまでが朝から大声で合唱しながら歩いてくる。こういう人々は昨夜からの徹夜組に違いない。「あっちで卵投げをやっていますよ」「卵投げ?」立てた板に穴を開け、若いやつがその穴から顔だけ出していた。20メートル先から客が卵を投げつけるという商売だ。卵一個が2ユーロだという。みんなへたくそで、とても見ちゃいられない。こうなったら、わたしがやるしかない。こういうクダラヌことに対するわたしの情熱とセンスは抜群なものなのである。わたしには卵2個で十分。「イイカー、アテルゾー、カクゴシロー」と日本語で叫んだ。1発目は穴の上方30センチに当たり、2発目は見事、額の中央に命中した」やんやの喝采のなか、「やればなんでもできる。いち、にい、さん、ダアー」と右手を天に突き上げた。
 歩き回ったのでお腹がすいた。Albert Kijpマーケットの魚屋で今が旬の生ニシン(ハーリング)をだしていた。レモンをかけ玉ねぎみじん切りをしっかりとのせ、ナイフで切ろうと思ったら、「おい、旅人よ、生ニシンはこうやって食うのさ」と、隣の大男が尻尾の方を指でつまみあげ頭からガブリとやった。そうか、これだ。わたしも同じようにやってみる。生とはいってもごく僅かに味付けをしており、脂がのっている。しかし、美味しいものがたくさんある日本ではまず食べないだろうな、と思う。口の中の海臭い脂をハイネケンビールで流す。「旅人よ、どうだい?うまいだろう」「うーん、オランダの味だなあ」
 広大なVondel Parkを歩く。前に進めないほどの混みようだ。なぜなら、一般市民の人々が露天市を開いているからである。子供のおもちゃ、古本、CD、古着、食器、クッキーなど、なんでもある。まあ、全部がガラクタですな。少年や少女が独りで下手な楽器を鳴らしていたりすると、どうしても1ユーロぐらいあげたくなってしまう。市街地とは違って、ほのぼのとした空気に包まれている。ここではポーフェルチェというたこ焼きのようなパンケーキをつまんでみた。オランダのおやつである。バターと砂糖を少なくしてもらったが、わたしにはこれで丁度よく、ほどよい甘さと香ばしさが口の中に広がって、フルートの少女の頭をなでてやりたいほどやさしい気持ちになれた。
 運河はボートでいっぱいである。男女比1対1の10~20人ぐらいのグループが主で、ワインを飲みながら歌ったり踊ったりして楽しそうである。若人ばかりではない。田舎からボートで出かけてきたと思われる家族や、わけありの中年カップルもいる。うらやましいことおびただしい。ボートから転落した女性をひきあげていたり、酔っ払いが橋の上から飛び込もうとするが何度もためらったりしている。私達が運河のカフェで水の上を吹く風を受けながら日光浴をしていると、ボートが次々にやってきてほろ酔い気分の若者たちが大勢上陸してきた。わたしはこれらの風景に同化し、いつまでも飽かずにアムスの祭日の喧騒の中に身をゆだねていた。
 夕食はホテルオークラの、今がまさに旬であるというベビーラムの料理を食べることにしている。やっとのことでつかまえたタクシーがひどかった。窓に肘をかけ、女とケータイでしゃべってにやつきながら、「サービス料を入れて30ユーロだぜ、いいな」と違法なことを言う。ならず者である。普通の倍ぐらいの値段だが、他にタクシーがなさそうなので仕方がない。大声でケータイをしゃべりながら無意味な急ブレーキを繰り返す。これまで、ヨーロッパのタクシーに乗っていい思いをいたことがない。日本におけるタクシーや店の対応の質の高さ、ホテルやレストランの清潔さを、ほとんどの日本人は認識していない。日本ほど良い国はないのである。ホテルオークラのロビーに入った瞬間、落ち着いた静かな雰囲気に、尖った神経が安らいでいくのを感じた。このホテルの中はまさに日本なのである。そのことをまこと君に伝えると、大きくため息をつき、「ホントーデスネー」2人ともソファーからしばらくの間立ち上がることができなかった。

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