糖尿病、生活習慣病の専門医院 松本市・多田内科医院

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多田久也のコンサート放浪記

(12)豪華なるダブルヘッダー

(敬称は略します)

 平成26年4月19日、半年ぶりに上岡敏之が来日し新日本フィルのベートーベン6番を指揮するというので、今回は娘も連れて錦糸町のすみだトリフォニーホールにやってきた。松本のハーモニーホールでのあの衝撃の上岡演奏会(ベートーベン3番)を、娘も私と一緒に体験しているので、今回のベートーベンは娘も気になるらしい。演奏会の前半はシベリウスの交響曲第4番。聴いたことがない曲なので、10日前にクレモナへ飛び込み、金森氏に薦められたサカリ・オラモ指揮バーミンガム市響のCDを購入した。金森氏は「この曲は3、4回聴いてもなんだかよくわからないですよ」と言う。それで私は10回聴いてみた。それでもなんだかよくわからない。心地よいメロデイーのフレーズなどはどこにもない。この曲はシベリウスが病気になって自らの死と向き合った時期に書かれたものなので、彼の作品の中では最も暗く、陰鬱なものである。しかし、上岡の演奏は聴いてきたCDとはまったく異なった曲のようだった。暗いというよりもむしろ厳しい演奏という印象で、終始にわたって透明感に満ちていた。指揮者もオーケストラも、真剣な表情と気合の入れ方が尋常ではなかった。一転、“田園”は美しさの極みだった。この曲をただただ美しく響かせたいと願って演奏したらこうなるであろうというような演奏であった。最初から速いペースで進み、音楽は全く停滞することがない。特に管楽器がすばらしい。アマチュアフルート奏者の娘は、フルートの白尾 彰のきれいな音色に感心していた。全体的に音の強弱の幅が極端で、それだけピアニッシモの良さが際立つことになる。上岡の良さの秘密はこのピアニッシモの美しさにあるのかもしれない。クレモナの金森氏も、ピアニッシモの歌わせ方の美しさが上岡の最大の魅力だ、と述べている。このピアニッシモに関しては、クライバーの場合は胸がかきむしられるような儚くも官能的な響きだが、上岡の場合は透き通った水底に届く一筋の光のような、そんな清明な響きに感じられる。私の最も好きなベートーベン6番はブルーノ・ワルター、コロンビア交響楽団のCDであるが、クライバーのも良い。ぜひ一度聴いてみていただきたい。最初から信じられないほどの速さだ。このまま進んでいって本当に大丈夫なのか、と思ってしまうが、美しい調べは全く損なわれていない。嵐の楽章はすさまじい。私は初めて聴いたとき、恐怖感に襲われ背筋がぞっとしたほどだ。
 おっと、こうしてはいられない。16時終演となりカーテンコールは続いているが、早くこのホールを出て総武線快速に乗らなくてはいけない。17時から赤坂のサントリーホールで次の演奏会があるのだ。駆け足で電車に飛び乗り、東京駅でタクシーに乗った。サントリーホール前のカラヤン広場でtakeoutのコーヒーを飲む余裕があり、ほっとする。デビッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の演奏会で、モーツアルトのヴァイオリン協奏曲第5番のソリストはギドン・クレーメル、メインはブラームス交響曲第4番。世界最高峰と言われているクレーメルの演奏は私にとって初めてで、とても期待している。松本で聴いたパールマンやムターのヴァイオリンと比べると、クレーメルは繊細で、ちょっと触れたら壊れるガラス細工のような響きに感じられた。私はジンマンと同楽団のベートーベンを、15年前にこのホールで聴いたことがあるが、このコンビは今年で最後になるという。数時間前に、上岡のスリリングな音楽を聴いたためであろうか、ブラームス4番は私には実に安定した演奏に感じられ、曲そのものを安心してじっくりと鑑賞することができた。
 19時終演。カラヤン広場に面した“オオバカナル”というパリにあるビストロの支店に入った。このビストロはパリの雰囲気がそのまま再現されている。私はサントリーホールの帰りにここへ寄るのを楽しみにしている。以前、マリス・ヤンソンス ロイヤル・コンセルトヘボウ管の演奏会の後に来た時に、演奏を終えた楽団員達が燕尾服のままカウンター席にやってきて、ちょうど来日していたウイーンフィルのクラリネット主席 ヨハン・ヒントラー達と歓談しているのを目撃し感激したことがある。今日は生ハムや子羊の料理などを頼んで、赤ワインで乾杯した。「ああ、東京はやっぱりいいなあ。サントリーホールの近くに引っ越してきたいなあ」

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