糖尿病、生活習慣病の専門医院　松本市・多田内科医院

偽りの楽園 ／ トム・ロブ・スミス　田口俊樹訳（新潮文庫）★★★
　海外ミステリーの中にはめっぽう面白いものがあり、その期待で手にすることがときどきある。両親はスエーデンの田舎に隠居しているのだが、母親がロンドンに住んでいる息子を突然訪ねてきて、自分たちの農場周辺で犯罪が起きていると訴えて来た。それを告発しようとしている自分が精神病患者に仕立て上げられ抹殺されようとしていると怯えて逃げて来たのだ。種々の証拠らしき怪しい物品をカバンから１つ１つ取り出して説明するのだが、読者にはそれらがとても証拠になり得るものには思えない。そこへ父親がやってきて、妻は病気なのだと言う。息子はどちらを信用していいのか分からなくなる。果たしてどちらが本当のことを言っているのか？本当に犯罪は存在するのか？息子がスエーデンの農場を実際に訪ねて行って明らかにされる真実とは？この物語は先へ先へと読み進ませる強い力を持っている。（平成２８年１０月）