糖尿病、生活習慣病の専門医院 松本市・多田内科医院

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多田久也のコンサート放浪記

(11)「クレモナ」
 まつもと市民芸術館の向かいにあるクラシック音楽専門のCD店で、DVDやレコードもある。ユニークな店だ。ごく小さな店だが、壁いっぱいにCDが並んでいて、一番奥に店主の金森氏が座っている。そこが彼の定位置で、動かない。金森氏の情熱とこだわりに溢れた、いわば金森ワールドとっても良い雰囲気がある。店内に入って、ひととおり見渡してびっくりすることは、陳列の仕方が作曲家別や演奏家別に並んでいないことである。それは主としてレーベルごとになっており、金森氏の美的感覚に沿って並べられている。慣れていない客は、どれがどこにあるのかが良くわからない。しかし、金森氏はどれがどこにあるのかをすべて把握している。その証拠に、たとえば、ヤンソンスのマーラー3番はどこにありますかなどと問えば、奥に座っていてよく見えないはずなのに、「右の手前の棚の上から4段目で奥から4,5列目です」などという答えが返ってくる。そう言われてもわからず、ウロウロしていると、「今、お客さんが指さしているところから右へ30センチぐらいのところです」などと言われる。金森氏から全くの死角になっている場所においても同様に教えてくれる。さらに驚くべきことは、金森氏のクラシック音楽に関する知識の広さと深さである。何を聞いても知らないことはほとんどない。
 私は、演奏会であまりよく知らない曲はあらかじめ予習してから行くことにしているが、こういうときは必ずクレモナを訪れる。この曲はどのCDがいいですか、と問えば、たとえば次のように推薦してくれる。「この曲は今、4枚置いていまして、これが一応名盤とされていますが、多田さんの好みからすると、こっちの方がいいと思います。あっ、ちょっと待ってくださいよ。同じような感じのもので、こっちの方が音が良くて安いですから、こっちにしましょう」 まさに、クラシックの名ソムリエなのである。買いたいCDを見つけた時、私自身がそのCDを持っているかどうかを忘れることがある。そんなときは金森氏に「このCDは、私、持っていますかねえ?」などと聞くことがある。すると「多田さんはたぶん持っていませんよ」などと教えてくれる。私のCD棚に関しても詳しいようだ。
 こういうことを書いていると、この店はさぞかし、私のような変わり者や、いわゆる音楽通の人ばかりやってくるのかと思われがちだが、決してそんなことはない。実際、私などはクラシック音楽の初心者であるが、15年も前からこの店に通っている。もし、クラシック音楽の初心者のあなたが、たとえば、「ベートーベンの交響曲を聴いてみたいのですが、どれがいいですか?」と金森氏に聞けば、第1番から第9番までそれぞれ、どのCDをはじめに聴けばいいのかを、懇切丁寧に教えてくれるはずだ。
 私は休日などにこの店に来ることを大きな楽しみにしている。金森氏と話がしたいということが、この店に来る楽しみの何割かを占めている。私が金森氏と話すようになったのは、3,4年前からである。それは、私がコンサートへたびたび行くようになった時期であり、コンサートの感想などを報告を兼ねて話すようになったからである。私のつまらぬ、的外れかもしれない、いい加減な話を、快くうんうんと聞いてくれる人はきわめて少なく、金森氏はその貴重な人のひとりなのである。さて、来週は「ブラームスでなにかいいのがありますか?」と立ち寄ってみたい。私がまだ持っていない室内楽の名曲を推薦してくれるにちがいない。

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