糖尿病、生活習慣病の専門医院　松本市・多田内科医院

　この店が中町にあるというだけで、中町を歩くのが楽しい気持ちになる。2階の板の間に胡坐をかいて京風の鳥とつくね鍋を食べるのもよし、居心地の良いカウンター席にデンと座り、ご主人お任せの料理を食べるのはもっと贅沢だ。たまさかに、お客が来たときは離れの蔵の一室を予約することもある。名物の鳥鍋はもちろん美味しいが、私は軍鶏の鳥すきが大好物である。これはあらかじめ予約が必要だ。軍鶏のあらゆる肉が供され、いずれの肉も美味しい。とくに皮付きの軍鶏肉はぎゅっと引き締まっており、なんと言っても皮の部分がすばらしい。これが本当に鳥の皮だろうかと疑わせるようなしゃきっとした食感で、生まれてはじめて経験した味だ。
　ご主人が実に研究熱心で、素材を厳選する姿勢を絶対にくずさないことには感心する。その結果、訪れるたびに料理のレべルは高まっており、その季節のお勧めの鍋が用意されている。さらに、リクエストにも快く答えてくれる。これまで、浜名湖のすっぽん鍋、丹波のいのしし鍋、下関のふぐ鍋などを特別にやってもらい、いずれも忘れ得ぬ心に残る料理となった。
　今この文章を書いているのは7月であるが、１週後に故里から親友が一晩だけ訪ねてくるというので、予約の電話をしたところ、ちょうど鱧鍋と鮎の真っ盛りであると言う。鱧鍋と鮎料理。なんという魅力的な響きであろう。久しぶりに心のおけない友と酒を飲み、大好物の鱧と鮎を食べることを思うと、私はこの１週間を普段よりもはるかに心楽しく豊かに生きていけることだろう。
　最後に、店の２人の女性の丁寧で親しみやすい応対も特記すべきものがある。

追記：友人と訪れたときの献立
　　　　1. 蟹、とり貝、じゅんさい、オクラのソースの前菜
　　　　2. 鮎のてんぷら
　　　　3. 金目鯛のたたき
　　　　4. 鱧鍋
　　　　5. 天然うなぎの白焼き
　　　　6. まながつおのフライ
　　　　7. 時しらずとさやえんどうの炊き込みご飯　など

（松本市中央3-4-20、0263-36-7559）