糖尿病、生活習慣病の専門医院 松本市・多田内科医院

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私が選んだ百人一首(二)

十七 藤原敏行 (?~901)
秋の夜の明くるも知らず鳴く虫はわがごとものや悲しかるらむ
(秋の長夜が明けるのも知らずに鳴きつづける虫、私のように何が悲しくて堪らないのだろう)
 業平とは妻どうしが姉妹で、二人とも色好みであった。身分も同じようなもので蔵人頭を経て右兵衛督(皇居警備の長官)になった。歌人としてはあまり有名とは言えないが、六歌仙よりも技巧性が優れ繊細かつ清新な感覚があり、和歌的には業平から貫之への橋渡しをしたような歌人というような評価もされている。また、能書家としても名高い。三蹟の一人である小野道風が村上天皇に「我が朝の上手は誰人ぞや」と問われたとき、「空海、敏行」と言上したほどである。
 代表作として次の歌が有名である。
秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 
 好きな一首を選ぶとき、次の二首を含めどれを選ぶか最後まで迷った。
白露の色はひとつをいかにして秋の木の葉をちぢに染むらん
(白露の色は一色なのに、どうして秋の木の葉を多彩な色に染めるのだろう)
恋ひわびてうちぬる中に行きかよふ夢のただぢはうつつならなむ
(恋に悩んで悶々と過ごすうち、ふと落ちた眠りの中であの人に逢えた。夢の中で往き来する道はまっすぐあの人のもとに通じているのだ。現実もそうであったらいいのに)
 「白露」は理知的な歌だがすこしユーモラスな感じがあり、私の好みである。露が降りると木の葉が紅葉すると当時の人は考えていた。「夢のただぢはうつつならなむ」は、現実には逢うことができない難しい恋のつらさが率直に表れている。“直路”は目的地までまっすぐ行ける道のこと。「鳴く虫」を選んだのは、たとえばある夏の朝方ふと目覚めて、もうすぐ夜が明け始める暁闇の頃、虫の鳴く声が聞こえてきて、べつに何の理由があるわけでもないのだがなんとなくもの悲しい気分になる、というような共感であろうか。日本人の心ははるか千年を隔てても変わりはしないという一種の感動がある。
小倉百人一首 住の江の岸による波よるさへや夢のかよひ路ひとめよくらむ

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